リモートワークで人がまばらなオフィス、今となれば見慣れた光景かもしれませんが、それを2013年の創業当初から“日常”としている企業があります。女性起業家ストーリーの第一回目は、働き方改革なんて言葉が生まれるずっと前からフルリモートワークを導入している株式会社Warisの田中美和さんにお話をお聞きしました。

「実現したい思い」に導かれた3人の女性が起業したWarisとは?

―― 株式会社Warisは、フリーランス女性と企業をマッチングする『Warisプロフェッショナル』、女性役員の人材紹介サービス『Warisエグゼクティブ』、離職中の女性の再就職を支援する『Warisワークアゲイン』の3つの事業を軸に、すべての人が自分らしい人生を歩むために必要な新しい働き方を提供している。

田中氏 「現在では約2万名の女性と1800社の企業様にご登録いただいています。副業や兼業を解禁する企業も増えるなか、リモートワークなど新しい働き方への意識が深まり登録者数は増え続けています」

―― Warisは田中さんを含めた女性3人で創業し、今も共同で代表を務めるユニークな企業としても知られている。共同代表の3人はどのように出会い、Waris創業に至ったのでしょうか?そこに見えたのはある共通の思いでした。

株式会社Waris 田中美和氏
代表取締役/共同創業者

たくさんの働く女性たちへの取材から見えてきたこと

―― 学生時代は、海外からの留学生に日本文化を紹介する国際交流のボランティア活動に参加。自らが企画したプログラムで留学生が喜ぶ姿を見て、強いやりがいを感じたと言う田中さん。その頃、国連難民高等弁務官を務めていた緒方貞子さんへの憧れも手伝って、「国連で働きたい!」との思いを募らせた。

田中氏 「そんな時、アルバイトをする機会に恵まれた大手通信社で、世界のあらゆる情報が集まる場所にいるワクワク感や、発信した情報が誰かの新しい一歩になりえる喜びを感じて、この世界に行きたいと思うようになりました」

―― そして、2001年に日経ホーム出版社(現在の日経BP社)に入社。希望した日経ウーマンに配属され記者生活をスタートさせる。

田中氏 「日経ウーマンの記者時代は忙しい日々でした。まだまだ働き方改革なんて言葉が生まれるずっと前ですから(笑)」

―― 取材内容は仕事の悩みから恋愛や結婚などのプライベートな相談まで、多岐にわたったと言う

田中氏 「なかでも、仕事を続けていいのか?諦めるべきなのか?そんなライフとキャリアの両立に悩む女性たちの姿をたくさん見てきました」

―― その現状をどうにかしたくて田中さんは在職中に当時の記者としては珍しいキャリアカウンセラーの資格を取得。

田中氏 「日経ウーマンにはたくさんの読者がいましたし、誰かの新しい一歩につながっている実感を糧に頑張ることができました」

―― でも、その反面、伝えることの限界も感じていた。「メディアの仕事は情報を伝えること。そのあとのことは受け手次第。でも、もっと直接的に『女性が生き生き働き続けること』を支援できないだろうか…?」そんなモヤモヤとした葛藤を抱えていた頃、田中さんの気持ちに大きな変化を及ぼす出来事が起きる、それが東日本大震災だった。

⾃分で⾃分のキャリアを創っていくような感覚との出会い

田中氏 「直接罹災したわけではありませんが、そこで改めて一度きりの人生を生きていることを強く意識しました。だからこそ、自分が本当にやりたいことをやろう、女性の不安や焦りを解消するための方法として女性が働き続けるためのお手伝いをしようと決意したんです」

―― 11年の記者生活に別れを告げた田中さん。大きな出版社から突然フリーランスになる不安はなかったのだろうか?

田中氏 「もちろん恵まれた環境を飛び出す不安もありましたが、記者仲間でもフリーランスとして活動している方もいましたので、経験談を聞いているうちに『なんとかなるだろう』と前向きになれました」

―― フリーランスとなった田中さんは、前職のスキルと経験を活かしてライターや記事の編集をしながら、キャリアカウンセラーとして⼤学や企業で人事の仕事に携わる中で、⾃分で⾃分のキャリアを創っていくような感覚を覚えたと言う。

田中氏 「ライフワークとしておこなっていたボランティア活動にも思い切り取り組めましたし、時間と場所の自由度が極めて高いプロジェクト型の仕事を通して、ワークライフバランスがとりやすいフリーランスの魅力を実感しました。その反面、フリーランスが⾃分一人でプロジェクト型の仕事を探すのは大変なこともわかりました。もし、フリーランスとプロジェクト型の仕事を結ぶプラットフォームがあれば、結婚や出産、介護などを理由に離職せざるをえない女性の悩みが解決できるのではないかと思いました」

思いを思いのままにせず口に出し続けたら…

―― 決意したのはいいが、そこから先どうしたらいいかはわからない…。思いがカタチにならないジレンマを抱えた田中さんに運命とも呼べる転機が訪れる。米倉史夏さんと河京子さん、後にWarisを共同創業することになる二人との出会いだ。出身大学が同じ三人だが、それは全くの偶然、学生時代には一切の接点を持たなかった三人が、どうして出会うことができたのだろうか?

田中氏 「私と『同じようなことを言っている人がいる』とそれぞれ違う友人に紹介してもらったのが、米倉であり、河でした。二人も結婚や育児をしている女性というだけで面接もなかなか受けることができない、職場や労働市場で女性が「二軍扱い」される現状に疑問を感じていました。『働く女性を支援したい』との思いは同じでしたので、仲良くなるために多くの時間は必要ありませんでした」

―― 目指す場所を共にする者が出会い、『なにかおもしろいことをやりましょう!』と、意気投合する。その高揚感をビジネスパーソンの方々なら一度は経験したことがあるのではないだろうか。だからこそ実際にカタチにする難しさもわかるはず。でも、3人は、そこから『起業』という結果に辿り着いた。なぜか?

田中氏 「私たちもやりたい思いや目指す場所は同じでしたが、それはまだフワフワとしたものでした。そんな時に友人から薦められたのが『ビジネスコンテストへの応募』だったんです」

―― 既に締切が間近に迫るなか、3人は挑戦を決意。

田中氏 「それぞれ仕事をしていましたし、米倉には育児もありましたから会えるのは就業前の早朝しかない、ミーティングはいつも渋谷駅のお店で、とにかく寒かったのを覚えています…(涙)」

―― 応募には事業計画書の提出が必要だったが、

田中氏 「その制作過程で自分たちの中にある曖昧なビジョンが数字や言葉となってどんどん具体化されてきました」

―― この時に応募した事業こそ、後の<Warisプロフェッショナル>の原形となる、ビジネス業務(人事、営業、マーケティングなど)のフリーランスと企業をつなげるマッチングサービス。当時のフリーランスといえばクリエーターが多く、ビジネス系フリーランスという発想は斬新なものだった。

もうあきらめなくていい、フリーランスという選択肢をすべての人へ

―― 大賞こそ逃したものの、小さな賞と『社会的に意義のある事業』として高い評価を受けた3人は、「せっかく具体化させた事業をこれで終わりにするのはもったいない」と、起業を決意。株式会社Warisの誕生、受賞からわずか1ヶ月後の2013年4月のことだった。

田中氏 「マッチング事業に何より必要なのは登録数ですが、創業して間もない頃は、資金もありませんので広告宣伝費はかけられない、最初のご登録者100名くらいまでは3人の友人や友人の友人を頼りに営業をしました。地道な活動は大変でしたが、社会の課題解決に貢献している、誰かの役に立っている、その充実感の方が大きかったです」

―― 創業当時のことをそう振り返る田中さん、あれから8年が過ぎた今、社会の働き方に対する意識は大きく変わりつつある。「時間や場所にとらわれないプロジェクト型の仕事が増え、営業や広報、人事などのビジネス系の職種にもフリーランスが選択肢に加わりました」それは新型コロナウイルスが大きな影響を及ぼしている昨今、より顕著になっていると言う。

田中氏 「オフィス常駐の勤務条件が減少し、商談や面談もリモート、場所と時間の制約がより少なくなって、フリーランスが活躍できる機会が増えています。また、多くの企業で副業や兼業を認める動きも活発になり、Warisでも20代女性の登録者が増えているのも特徴です。20代の生き方の選択肢として、フリーランスがあることは一昔前では考えにくいことでした」

創業当時の共同代表(左から米倉さん、田中さん、河さん)
株式会社Waris提供

フルリモート、コアタイム2時間、Warisの自由な働き方を支えているものとは?

―― 現在、50名ほどのプロジェクトメンバーからなるWarisだが、フリーランスや副業として参加しているメンバーもいる。

田中氏 「創業当初から働き方への考えはブレていません。私たちの事業内容を考えても、自らが⾃由度の⾼い働き⽅を実践するのは当たり前のことだと思っています。フルリモートこそ今となっては珍しいことではないですが、コアタイム2時間(10時~12時)は驚かれることもあります」

―― 働く時間も場所も自由、極めて少ないルールの中で、なぜメンバーが同じビジョンを共有し、同じ未来へ進み続けられるのだろうか?そこにはWarisならではの答えがあった。

田中氏 「私たちの『Live Your Life~すべての人に、自分らしい人生を。~』のビジョンに共感して参加してくれていることが大きいと思います。Warisが掲げるパーパスや5つのバリューが共通認識としてメンバーの根底に脈々と流れていますし、採用基準のひとつでもある自律性の高さも働く場所を問題にしない理由として挙げられます」

―― もちろん、それだけではない。それを支える環境づくりもまた大切な要因だと言う。

田中氏 「場所を選ばず仕事ができるのも信頼できるノートパソコンがあればこそ、常に最新のテクノロジーを活用した快適な環境づくりを心がけています。特にWarisのようなスタートアップは少人数で業務を遂行しなければならないので、ITに求めるスペックはもちろんのこと、トラブル時には何から何まで頼ることができる、充実したサポートを重要視しています」

国内外に根をはる、ニューノーマル時代に咲く花

―― 少しずつその存在感を増してきたWaris。メンバーの9割は女性だが、「決して女性限定のチームではありません、最近も男性メンバーが新たに仲間入りしたところです」と話す田中さんの凛とした瞳は常に少し先の未来を見据えているようだ。

田中氏 「今、私は東京、米倉はベトナム、河は福岡でそれぞれ暮らしています。米倉は配偶者の転勤でベトナムに越してきた優秀な女性がキャリアを諦めている現状を目の当たりして、フルリモートでできる仕事の創出に尽力し、河は営業スキルを活かして、福岡オフィスを拠点に活動エリアを広げるなど、それぞれの地でWarisプロジェクトを進めています」

―― 国内外に着実に根をはりめぐらせているWarisプロジェクトだが、記者時代から起業を経て今日まで走り続けてきた田中さんの原動力はどこにあるのだろうか。

田中氏 「ちょっと苦しいなと思う時は『Warisさんがあって良かった、救われました』というお客様から頂いた言葉に支えられています。企業側からも『優秀なフリーランスのおかげで、新規事業を生み出せた、業務改善にも繋がった』というお声を頂くなど、少しずつでも社会の課題解決に貢献できている、そんな実感が私の大きな力になっています」

―― 専門的なスキルをプロジェクト単位で活かせるフリーランスの力は、変化が激しく未来が予測しにくい、ニューノーマルな時代こそ必要とされるはずだ。そして、それこそがWaris創業時に共同代表の3人が思い描いていた未来だったのかもしれない。

田中氏 「Warisとはアフリカのソマリアの言葉で『砂漠で咲く花』を意味します。砂漠のように環境変化の激しい場所でも、一人一人が自分らしく『能力』という『花』を咲かせて生きていける社会を創りたい、そんな願いを込めて社名にしました」

―― 今日もそれぞれの地で蒔かれている「砂漠に咲く花」の種が、やがて芽を出し、花を咲かせる。そんな遠くない未来へ向けて、最後に田中さんへ今後の夢を尋ねてみた。

田中氏 「『Live Your Life すべての人に、自分らしい人生を。』の実現を今後は個人から社会に大きく広げていきたいと考えています。私には今、3歳の娘がいますが、彼女が大人になったときにワクワクできる時代になっているように、ひとりひとりが自分らしい働き方、生き方ができる社会を創ることに貢献したい、私たちはそう願っています」

―― これまでも、これからも、揺らぐことがない思いと枯れることのない情熱で、田中さんは歩み続ける、一歩一歩、『Live Your Life』の実現へ向かって。

田中様からデル・テクノロジーズへメッセージを頂きました!
私たちWarisでは創業期以来、DELL製品を使っています。リモートワーク中心でのビジネスには、信頼できるモバイルPCの存在がかかせません。なにかあったときもサポート体制が充実されていて本当に心強いです。また、DELLさんがグローバルで女性起業家向けに開催されているDWEN(Dell Women’s Entrepreneur Network)にも参加させていただいたことがあり、世界各国から集まる女性起業家のみなさんに多くの刺激をいただきました。私たち女性起業家への支援体制に深く感謝しております。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

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