日本のGDPの約10%(50兆円)を占めると言われる巨大な建築業界。日本で最も古い業界の一つであり、建築業者である大阪・金剛組は世界最古の企業と記録されていることは周知の事実である。

一方で、歴史のある建築業界には他業界にはない商習慣、構造が存在する。日本の建築業界は130万以上もの事業者で構成されているが、ほとんどが個人事業主や中小零細企業であり仕事が発生した時に知り合い同士で声を掛け合い集まりプロジェクトを遂行する。驚くことに、これは江戸時代初期から続く構造だという。

令和2年。スタートアップ企業であるローカルワークスは、この独特な構造をテクノロジーの力で改善しようとしている。なぜ400年以上も続く構造を変える必要があるのか。何を変えようとしているのか。代表取締役の清水勇介に、その想いを聞く。

400年以上続く、皆が努力しても変えることができなかった良くも悪くもムラ社会的な構造

清水によると、知り合い同士で仕事を回すという建築業界ならではの特殊な構造は、馴染みの仲間と仕事ができる安心感・安定感はあるが、一方で知り合い経由でしか仕事を入手できないという問題や、仲間が忙しい時には新たな仕事を請けられないといった問題が付きまとう。良くも悪くもムラ社会的な構造になっていると言えよう。ただ、誤解の無きよう書くが、ムラを出ていく、同じムラ以外の業者とタッグを組むことを禁じられている、というわけではなく、実行できる術がないようだ。

清水は指摘する。「そもそも新規で協力業者を探すことが難しい業界なのです」と。個人事業主も多く、中小零細企業が大半を占める建築業界。企業規模が小さいが故に、与信情報や職人技の評判などの情報が人づてにしか伝わってこない。結局のところ信頼できる情報は“信頼できる知り合い”経由でしか得ることができない。ムラを出たくても、ムラ以外の業者と仕事したくとも、手段はなく、リスクが多過ぎるのだ。誰も何も悪くはない。ジレンマだけが── 、そこには残る。

では、どうすれば。この問題の解決は困難極まりない。事実、400年以上誰も変えることはできなかった。しかし、DX(デジタルトランスフォメーション)時代が到来している今なら話は違うと感じたのが清水だ。「データやインターネットを活用することで、オープンなプラットホームを作れるのではないか」。2014年、今から6年前のことである、そして清水は起業する。

清水はそもそも建築業界の出ではない。米国での学生時代を経て日本に帰国。インターネット系のスタートアップや戦略コンサルタントなどに従事してきた。建築業界とは全く無縁の世界にいたのだ。転機が訪れたのは建築系のベンチャー企業に誘われて、副社長を務めたときのことだ。清水は当時を振り返る。

「それまで他の業界を見てきたので、比較することができ、建築業界ならでは構造的な問題に気付くことが多くありました。もちろん、他の業界にも問題はありますが、DXという言葉に表せられるように、テクノロジー、デジタルの力で解消されていく流れにありました。そこで、私が自分の目で7年間見続けてきた建設業界全体の負の部分を、テクノロジーとアイデアでアップデート、つまりは進化させることに挑戦しようと決断しました」

400年以上、誰も成し遂げられなかった業界の構造改革にメスを入れる

清水は、前述した「データやインターネットを活用することで、オープンなプラットホームを作れるのではないか」との考えを具現化・ビジネス化するために2014年にローカルワークスを創業した。しかし――。400年以上続く建築業界の構造改革への挑戦。さらに130万の事業者に対し、当時のローカルワークスのメンバーは6人余り。

テクノロジー、デジタル、アイデアはある。しかし圧倒的に人手が足りない。清水は苦笑した。「テクノロジーの力で建設業界にイノベーションを起こしたいと目指してはいましたが、毎日業務で使うパソコンはどういう製品が最適なのか、どのようにメンテナンスしていけば良いのかなど、社内のシステムを考えるための専任担当者を置く余裕はありませんでした」。

ローカルワークスに限らず、同じ悩みを抱えるスタートアップ企業は多いのではないだろうか。さて、清水はどのようにして建築業界に寄与すべく、400年以上続く歴史ある構造に改革への第一歩を踏み出せたのか。

「私たちは、テクノロジー、アイデアを駆使し、建設業界の皆様に効率化というバリュー(価値)を提供するために創業した企業です。建築業界の皆様にバリューを提供するためには、ローカルワークスのメンバー各々も最大限のバリューを発揮する必要があります。しかし、私たちはスタートアップ企業であり、人的資源は大企業に比べると圧倒的に不利です。よって経営陣が、全業務を俯瞰し、私たちでしかできないもの、協力会社にお願いできるものを整理し、決断し、常に効率化を目指す最適解を追及する必要がありました」

「社員の力を100%引き出すためにすべきこと」
について語る清水

メンバーが持つ才能・バリューをいかに効率化するか、それは単なる経営者視点からの効率化だけではない。メンバー視点からも、“自分が目指すことに集中できる、持てる力を最大限発揮できる”と感じてもらうことがモチベーション向上につながり、より生き生きと仕事に取り組むことができる環境を得ることができる、WIN=WINの関係を構築できる。

そのためには── 。メンバーの得意分野を生かすためには無駄な作業をさせたくない。ストレスなく業務に集中してもらいバリューを発揮してもらいたい。少数精鋭なので日ごろの対話、コミュニケーションはとれている。では、ストレスのない業務環境に直接的につながる必要不可欠なツール、パソコンの調達・メンテナンスなどはどうするか。

製品の選定基準がわからず、まずは安い機材を導入するものの、すぐに壊れ、修理やら、その間に仕事ができなくなったメンバーへのフォローやらに追われていた。

「この無駄な作業やコストを繰り返すのか」。背筋が凍るような危機感がよぎる。スタートアップ企業である。間接業務には極力コストもかけたくないし業務を軽くしたい。

「とりあえずはDellさんに聞いてみようか」

清水が頭を悩ませていた問題はDellのサポートにより解決した。驚くほどにあっさりと。学生時代は米国に滞在していたため、清水はDellを創業当時から知っていて、「通販でパソコンを売る時代になったな」と、興味深く思ったらしい。さらに、清水はDellのパソコンを使用していた経験もあり製品に対する信頼もあった。「とりあえずはDellさんに聞いてみようか」と気軽な気持ちで問い合わせたという。

「その後、電話やメール、チャットを通じてコミュニケーションを重ねることができました」と清水は言う。「Dellさんには中小企業のIT課題に精通したアドバイザーがいらっしゃって、パソコンを使うメンバーの職種やITリテラシーなどをヒアリングしてくれて、最適な機種候補をアドバイスしてくれました。私たちは、それに従い検討し決定するだけでした」

Dellとのパートナーシップは続いているという。「今は、CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)がいて、社内の業務端末周りをサポートする能力はありますが、弊社が求めている彼のバリューはあくまでも建設業界をテクノロジーとアイデアで効率化することです。Dellのサポートのおかげで、CTOは自身のバリューを発揮することに専念できるのです」。

ローカルワークスは平均年齢30代と若い組織ではあるが、上は還暦に近い元・大工の棟梁であり、下は大学生インターンと幅広い。IT機器へのリテラシーもばらばらだ。しかもコロナ禍において完全リモートワーク化したローカルワークスでは、従業員がパソコンのトラブルに会った時には社内の他者がサポートすることは難しい。

信頼・信用・安心・安定。それらを誰もが得ることができる世界を建築業界にもたらしたい。そう願う清水らローカルワークスは、Dellに対して、同じテクノロジーを通じて社会を幸せすることを目指す企業として何か通じるものを感じたのであろう。

清水は言う。「私たちはテクノロジーで建築業界をアップデートする専門家です。しかし、会社である以上、IT周りの間接業務が発生します。餅は餅屋という言葉通りお互い得意なところで協力できるITパートナーが必要なのです」。

今、ローカルワークスは、400年以上も続いていた「知り合い同士で仕事を回すという建築業界ならでは特殊な構造」を改善するために、信頼できる取引先を簡単に探せるB2Bの取引先検索サービス「ローカルワークス サーチ」を展開しており、4000社もの事業者が利用している。

利用者からは、「今まで自分たちでは手が届かなかった情報にアクセスできるようになった。今までになかった取引が増えてチャンスが広がった」との喜びの声が寄せられているという。知り合い経由からと同様な情報を、別の手段から得ることによって、これまでに縛られていたムラを飛び越えることができる。

コロナ禍のその先

さらに清水は言う。「コロナ禍によって工事が止まったり、個人宅の着工件数が減ったりはしているものの、これはいつか解消される問題です。注目していただきたいのは、日本は発展途上国ではないので、メンテナンスやリフォーム工事は必ずあるということです」。

どういうことか。「建設業の仕事の約3割は既存の建物のメンテナンスです。個人宅ならそれをリフォームと呼びます。道路や水道などインフラのメンテナンスも必要です。今までに日本中で建造されたものに対するメンテナンス需要は今後益々増加する傾向にあるため建設業界は廃れることはないのです」、と清水は言う。そして、「日本のGDPの10%を支える建設業界に貢献することで、日本経済を支えることにも寄与できます」とも語る。

最後に清水に聞いた。「なぜ、パソコンが苦手な元・大工の棟梁がDellのパソコンだとリモートワークできるのか」と。清水は答える「シンプルで安定しているからだと思います。使う時に肩肘張らずに使える」。

日本経済の基礎を支える建築業界にイノベーションを起こそうとしているローカルワークス。少数精鋭で400年の壁に立ち向かう同社が、イノベーションに専念するために不可欠なパートナー。それがDellなのだと、清水の表情から窺えた。

Original
Source

text by Toshiharu Toda │ photographs by Kenta Yoshizawa
「Forbes JAPAN Web」2020.09.25 配信記事より転載

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